テレビ業界への就職・転職を目指す人へ!採用試験と仕事の実態【体験談】

 

なぜ私がテレビ業界をめざしたのか

私がテレビ業界を受けるきっかけになったのは、初めての就活で最初に出会ったとある新人社員の言葉と、「普通の仕事じゃつまらない」という当時の考えでした。

私がテレビ業界に就職したいと思ったのは、大学3年生の夏でした。

大学3年生のときに東京ビッグサイトで行われる大規模な合同会社説明会に参加し、そこで日本テレビの1人の男性新人社員のADと出会いました。

その新人社員は、見事に仕事を魅力的に話すのです。

上司からマイナスなことは言うなと言われているのかどうかは分かりませんが、就活生にテレビ業界のことを魅力たっぷりに話してくれました。

そのために説明会に連れてこられていたんだと思いますが。

「憧れの芸能人と一緒に仕事ができる」「夢が叶う仕事」「同世代より給料がいい」「大学ブランドはあまり関係ない」などといった感じです。

その言葉を信じた私は、「やっぱり仕事は普通じゃつまんないよな。一般企業で一般職とか総合職とかつまらんわ。よし!テレビ業界に的を絞って就活をしよう」と決意したのです。

周りからの「ADって絶対大変だよ」という言葉に耳も傾けませんでした。

結局入社4ヶ月で退職するんですけどね(笑)。

 

テレビ業界での就活のポイント

採用者の印象に残る履歴書

テレビ業界を受ける際の履歴書のポイントは、「アピール部分は太字で派手に」と「誰とも被らない経験を盛り込む」です。

まず、テレビ業界といってもテレビ局だけで成り立っているわけではありません。

むしろその下請けになっている、テレビ局の子会社やグループ会社、独立した多くの制作会社がテレビ業界を支えているといっても過言ではありません。

実際、テレビ番組を制作している8割は制作会社の社員です。テレビ局だけを受けて内定をもらうのはなかなか難しいです。

実際、今の時代もテレビ局に受かるのはコネか、大学ブランドが9割です。

その他の1割はよっぽど学生時代に何か特別なことで活躍した人か、ユーモアのあるエピソードを持っている人かだと思います。

先程紹介した、男性新人社員のADは「大学ブランドはあまり関係ない」と言っていましたが、実際彼の出身大学は慶応義塾大学です。

コネじゃない場合、優位な大学は東大、京大、早慶、上智、MARCH、関関同立あたりまででしょう。

私が受けたとある制作会社の社長も「ぶっちゃけ局に受かるのは、コネかトップの大学かなんです」と言っていました。

さらに、制作会社はテレビ局よりも給料が下がりますし、残業なんていう概念はありませんから、どんなに働いても残業手当というのは1円も支払われません。

そこを踏まえた上で入るべきです。

私が入社した制作会社は初任給23万円と制作会社の中でもトップクラスで高い方でしたが、小さな制作会社だと18万円、もっと低いところもあります。

私はまずTV局5社を受験しましたが、見事に全部お祈りされました。

某TV局は当時(3年前)、「応募者全員と一次面接をします」と平等に扱う旨のアピールをしていましたが、実際は全員と面接をしても、結局見ているのは学歴で、面接で学歴フィルターをかざしていたのでしょう。

私も見事に一次面接で落ちました。

一次面接でいきなり有名女性アナウンサーが面接官だったのはびっくりしましたが。

ことごとくテレビ局を落ちた私は、テレビ局の子会社と制作会社に的を変え、就活をし始めました。

いろんな制作会社の説明会に行き、社員の人たちの話を聴き、「20時には帰れてる」というADの言葉に「今のADってそんな感じなんだ。余裕じゃん」とADの仕事の過酷さを軽く捉え、テレビ業界以外見えなくなっていました。

制作会社の採用が本格的に始まる前に、私は都内にある小さな就活塾に足を運びました。

そこで出会った某TV局の子会社で働く先輩に履歴書を添削してもらいました。

その先輩の教えは、採用者に特にアピールしたい部分は太字で書くというものです。

テレビ業界の履歴書には「自由にアピールしてください」といった欄を設けている会社が結構あります。

そこに私は写真を貼ったりして、とにかく見てもらえるように派手にしました。

もう1つ、私がテレビ業界を受験するにあたってやったことがあります。

それは「1週間の酪農研修」です。

なぜそんなことをしたのかというと、先程も述べた就活塾の塾長に「他の人と被らない何か面白いことをしなさい。地元の田舎で酪農体験でもしてきたらいいんじゃない」と言われたからです。

やはり、テレビ業界では特殊性を求められるのですね。

その酪農体験は局の試験までには間に合わなかったのですが、制作会社の採用試験が本格的に始まる前のゴールデンウィークに地元に帰省し、山奥にある放牧酪農をやっている牧場で1週間研修をしたのです。

もともと牛は好きなのでとても楽しかったです。

酪農研修をし終えた私は、制作会社に出す履歴書の自己PR欄に大学でやっていたダンスと酪農研修で撮った写真を貼り、「ダンスと牛が好きなんです!」「特技は搾乳です!」といろんな面接でアピールしました(笑)。

すると面接官は「面白いね」と食いついてくることが多かったです。

 

どんな面接なのか

制作会社の面接では私服面接が圧倒的に多いです。スーツを着た面接は2つぐらいでした。

内容としては、面接前に「あなたの番組企画を発表してください」と就活生に事前に準備をさせ、二次面接や三次面接で企画の発表を求めるところが多かったです。

テレビ業界なので当たり前かもしれませんが。ある番組企画の発表では、酪農研修の実体験をもとに「もぉ~っと楽しい男女7人牧場ものがたり」と題した企画を発表しました(笑)。

とにかく実体験を番組企画にも入れ込みました。

私の主観ですが面接官も笑ってくれていたのが印象的でした。

結局この企画を発表した会社からは内定をもらいました。

他の就活生の番組企画発表の印象ですが、「なぜその企画なのか」が明確じゃない就活生の発表は、聴いていて個人的にも印象に残りませんでした。

気のせいか面接官もつまらなそうな感じで(笑)。

あとは具体的には「新しい紙幣の顔は誰がいいと思うか」というのもありました。

最終面接が社員との食事会というものや、カフェで社長と1対1でコーヒーを飲みながらというものもありました。

一般企業と異なり、面接も自由度が高く、自由度が高いが故に自分の何を見られているのか分からないという面接が多々ありました。

しかし、自分のどこを見られているのか不明瞭でも、とにかく自分の好きなことやものを素直に出すこと、緊張しても笑顔を忘れずに出すことが大事だと思います。

 

テレビ業界の仕事の実態

制作会社といっても番組への関わり方は様々です。

企画から編集までチームで入るのか、スタジオ収録だけに加わるのか、制作会社から派遣という形で局に送られるのか、といったパターンがあります。

制作会社を15社ほど受け、4社から内定をもらった私は、その中でも一番規模が大きく、社員数百名超、TV制作業界では長い歴史を持つ制作会社に入社しました。

私が入社した会社は企画から編集まで全てをチームで作るという会社でした。

配属されたのは某TV局の番組制作部です。

今は番組打ち切りになりましたが、10代女子向けの某番組制作チームに入れられました。

まずびっくりしたのが、配属初日から退社時間が23時だったということです。

一応会社として11時~20時と勤務時間を設定していますが、20時に帰れたことはほとんどありませんでした。

他の番組チームの同期はみんな帰っているのに、同期の中で私だけポツリと1人パソコンをカタカタということも。私の2つ上の先輩ADが、まぁこれまたくせ者で(笑)。

なかなか帰らせてくれない先輩でした。

他の同期の女の子に聞くと「結構先輩が今日は帰りなよって言って帰してくれる」というのです。

でも私の先輩ADは、わざと終電間際に上司から自分(先輩AD)宛ての仕事を全部横流しで私に「はい、やって」と振ってくる、とても嫌な奴でした(笑)。

でもこれはまだ序の口で、ロケに必要な備品150種の買い出しを1人で行かされて袋を持ち切れず、手がちぎれそうになりながら、1人渋谷の街を涙を流しながら歩いたこともあります。

先輩ADがあまりにも意地悪で、トイレでひっそり泣いたこともあります。

ディレクターが撮った映像を編集できるようにするための前段階で映像データを編集用に変換する作業があるのですが、そのために夜中の2時に出勤して1人オフィスで空しく作業をしたり、お風呂にも入れずそのまますっぴんでロケに行ったり、収録準備のため徹夜で準備をし、会社の椅子で寝て朝を迎える、なんていうのは日常茶飯事でした。

退職する前の1ヶ月半は1日も休みをもらえませんでした。1ヶ月の残業時間は100時間を超えていました。

局のプロデューサーというのは、そんな制作会社の苦労なんてお構いなしですから、徹夜してディレクターが編集したVTRをズバズバと修正要求したり、ロケでは急に不機嫌になったりなんてこともありました。

当たり前ですが、局のプロデューサーは視聴率が最優先なんです。

でも制作会社のディレクターはとにかく自分が面白いと思ったものを観てもらいたい。

毎回打ち合わせはそんな局プロデューサーと制作会社ディレクターのバトルでしたね(笑)。

結局どんなに大きな制作会社でもテレビ局の下請けでしかないんです。

私は一社のTV局しか携わっていませんので他局については分かりませんが、局のプロデューサーたちは明らかに制作会社を下に見ていましたね。

とはいえ、もっと大変なのが所謂ドバラエティといわれる人気番組です。

ドバラエティに配属されたADは、もはや会社が家なんじゃないかと思うほど帰っているところをみたことがありませんでした。

民放ドバラエティチームのフロアに行くと、いつも椅子を並べて寝ているか、死んだ魚のような目で仕事をしているかでした(笑)。

結局私は、ADの仕事に身も心もボロボロになり、早期に退職しました。

退職後、1ヶ月ほど強い倦怠感でベッドから起き上がれず、気持ちが沈んで外出できませんでした。

それほど過酷だったんだと思います。

その後は徐々に回復して、無事地元で転職しましたけどね。

今では、私の身体を心配してADを辞めるように助言してくれた友人と家族に感謝しています。

 

テレビ業界に転職を考えている人たちへ

 ここまで苦労話を散々書いてきましたが、テレビの仕事をしていて一番の醍醐味は、、やっぱり芸能人を身近で見られることではないでしょうか。

テレビ業界に入らないと、ロケや収録で芸能人と一緒に仕事はできないですからね。

私が一緒に仕事をした芸能人の中で一番好印象だったのが、香川照之さんです。

スタッフに対する礼儀や仕事に対する熱意に感動しました。

過密スケジュールで忙しいのにも関わらず、スタッフがロケの片づけを終えるまで待ち、最後にスタッフと楽しく雑談をして、1人1人の目を見て挨拶をして帰る、というなんて素晴らしい人なんだと思いました。

一流とはこういうことなのかもしれませんね。失礼かもしれませんが、大物芸能人でないほど、礼儀や態度の印象が悪かった気がします(笑)。

テレビ業界に居続けられる人は、テレビが大好きで、どんなに過酷でも芸能人と一緒に仕事ができて、自分が作った映像を世間の人に観てもらえるという喜びを追求し続けられる人たちなんだと思います。

そこに喜びを見出せない限り、この業界で生き続けるのは厳しいです。

私は芸能人とか映像云々よりも、とにかく仕事のつらさから解放されたかったですから(笑)。

必ずしも「テレビを観ることが好き=作るのも好き」とはなりませんからね。

大変さを重々覚悟した上で、テレビ業界をめざしてもらいたいです。

テレビ業界での就活では、自分の好きなことを明確にしておくこと、自分にしかない面白い経験を作ること、タフさをアピールすること(体力の要る業界なので)が大切だと思います。

制作会社に学歴フィルターはありません。

その点受験のスタート地点はみんな平等だと思っていいでしょう。

だからこそ、他の就活生がやっていないような自分だけの経験を持っていた方が印象に残ります。

テレビ業界だからユーモアがあると好印象なのです。

また、懸念として「なぜうちの制作会社なのか?」という面接官からの質問に対して「御社が作っている〇〇という番組が好きだからです」という返答をする就活生がいますが、これは△ですね。

なぜなら、番組というのは複数の制作会社が持ち回りで制作している場合が多いからというのと、必ずしも好きな番組に配属されるわけではないからということ、さらに番組は永遠に続くわけではないからです。

よって、「〇〇番組なら他社でも制作していますよ」と言われたり、「もし希望番組に配属にならなかったらどうしますか?」と聞かれたりします。

実際私が担当した10代女子向けの某番組は、私が退職後に打ち切りになりましたしね。

制作会社にもそれぞれカラーがあり、社員の雰囲気や、その会社の番組への関わり方などが異なります。

そういう点に着目するといいかもしれません。

余談になりますが、昨年大学の後輩から志望の制作会社の試験対策をメールで相談されました。

「履歴書は写真などを貼ってアピールポイントは太字にして、誰とも被らない経験を面接で話してみて」とアドバイスをしました。

やはりその後輩も志望の制作会社から内定をもらったそうです。

ぜひ参考にしてみてください。